仏像の髪型を研究してきて、たくさんの仏像を見ていく中で、「不動明王像」に魅力を感じる自分に気がつきました。
みなさんは、不動明王と言われると何をイメージしますか?
怒ってるとか、恐そうとか、めっちゃ強そうとか、閻魔大王的なやつとか、ガンコ親父とか…(僕もそう思ってました!)
色々あるかとは思うのですが、実はよ〜く不動明王をみていると、それがそうでもないように感じてきます。
時代によって、または作者によっても作風は変わるのですが、意外と優しく見えてくるんですよ!
誠実で、実にイイ眼をしているんです。嘘がなく、魂でもこもってるんじゃないかってくらいに光があるんです!
もはや理想の男性像ですね!
特に目を引いたのが、髪型がとても多彩で「柔と剛」を感じる作品に、より圧倒されていました。
そもそも不動明王とは、大日如来の化身、もしくはその内心の決意を表現したものではないかと言われています。(怒りみたいなものですかね。)
仏陀とは違って、架空のキャラクターですので、仏師の遊び心が満載の不動明王の魅力を、少しでもお伝えできればなと思います!
不動明王でよくある部位の説明から、
総髪(そうはつ)
髪の毛をすべて1箇所に集めていく髪型(不動明王の場合は左)
弁髪(べんぱつ)
髪の毛を束ねて垂らしている状態の髪型(現代で言うおさげの部分)
開蓮(かいれん)
蓮の花が咲いています。花が咲いていないバージョンで『莎髻(しゃけい)』というのもあります。莎髻はトップの髪を少しまとめたような形をしています。(まるで切り株のような)
上の写真でもわかるのですが、あらためてよ〜く見てみるととても斬新な髪型をしています。
なぜか左側に髪の毛を集めて耳の前(もみあげ付近)でおさげを作っているスタイルにしていますね。
ちなみに横の写真も見てみましょう。
左側
おそらく後ろの毛も、左もみあげに集めているように見えます。(7〜8箇所留めていますね。)
右側(左の写真が無かったため、似ている不動明王像)
右側も左もみあげに向かって、まとめていますね!
ということは、すべての毛を左もみあげの方面へ総髪にしているということは、結んでない時の状態は、とてつもないアシンメトリースタイルということになりますね。
なかなかリアルにこの髪型にしようと思うと大変ですね…
左側の長さが鎖骨より少し長いくらいで、右側は、胸下〜お腹くらいの長さがないと難しそうですね。
総括しますと、不動明王は、この「もみあげおさげスタイル」の髪型にしたいがために変則的に髪の毛をがんばって伸ばしたということになります。
本当にこの髪型にするには容易じゃないです!努力を感じます。
他の不動明王の髪型も見ていきましょう!
こちらは、あの空海さんがお造りになったそうです!今日本にある不動明王像のベースになったとも言われる作品だそうです。ちなみに髪型はほぼ一緒に見えますが、髪を留めている箇所が4〜5箇所になっております。(最初の写真の像はたくさんギュウギュウに結んでましたね。)
お次は、
アップで。
こちらは髪の毛は短いですね。センター分けにし髪は巻貝型方式、もみあげ付近の長い部分は、おそらく前髪以外の横の毛をのばして、ネジネジ捻りセットしているのでしょうね。
そして毛先に、葉っぱのような物もオシャレにアレンジを加えられています。
この葉っぱは、かえでかな〜なんて思ってたのですが、調べてみたらこれに近いような気がします!
カクレミノ
なんか、すごい遊び心満載のオシャレさんやなぁ〜。カッコイイ!!
お次はこちら
三つ編みしてますね〜!キレーですわ!
パッと見、編み込みしているように見えますが、おそらくその下にカチューシャ的な物をされているのを考慮すると、一度ヘアバンド的に下から留めてあげて、ハチ部分あたりの高めの位置から三つ編みを垂らしている感じでしょうね。
そのほうが三つ編みをより強調できますし気合も入りそうです!
こんな感じで、髪の毛を全部上げた状態で、左のハチ部分から三つ編みを垂らしていくということですね。
意外と自分でやるの難しいと思いますよ。
ということで、4つの不動明王様をご紹介させていただきましたが、どうでしたか?
紹介しきれない素敵な作品もたくさんありますが、なかなかキュートな髪型をされていますよね〜!
一見、強面な顔に見えますが、髪の毛のアレンジは、しっかり忘れないオシャレさんの一面も垣間見れたのではないかな〜と思います!
もちろん弁髪のない不動明王さんもいらっしゃいますので、是非見に行かれる際には、髪型も気にして見ていただけると不動明王様も喜ばれるかと思います!
最後にとてもお気に入り(不思議髪型セレクション)を発表していきます。
4体の神将立像なのですが、不動明王の如く怒ってます。
髪型も炎髪です。ガンガンに逆立ってます。
がしかし、よ〜く見てみてください。
みなさんの頭の上になにか乗ってますね。
ん?
動物か?
ん??
かかか、か、か、か、か、かわうぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーー!!!!!!11!
仙台市博物館 木造十二神将立像 鎌倉時代
なんすかこれは!?なんなんすかぁー!!
髪の中からひょこり小動物が顔だしてるよぉぉぉー!
神将さんめっちゃキレてるけど気づいてないの??
え?まさか飼ってる?
ということで、なんでしょう。この仏師というアーティストの遊び心は…
初めて見た時に本当に目を疑いましたね!この「柔と剛」の使い方。
『美しさ』と『カッコよさ』と『かわいらしさ』の究極の極みではないかと。
しかもこの動物たちもリアルに造られているというよりかは、キャラクターのようなかわいさを持ち合わせていますね!
現代の世界に誇る日本のアニメや漫画文化は、こういった先人たちの礎の上に立っているんだなと改めて感じました。
仙台博物館には四体しかなかったのですが、十二神将像なので、どこかにあと八体あるのでしょうね。おそらく十二支をモチーフに動物が乗っけられているのだろうと思います。
いや〜、ほんと大人になったって「遊び」って大事だよ。